甲子園で投球制限はなぜしない?アメリカではどうなの?選手の将来を潰す?

夏の甲子園で済美高校のエース山口直哉投手が延長13回を184球完投したことが大変な物議を醸しています。

ヤフーニュースでは5000件超えのコメント投稿があり、前大阪市市長の橋下徹氏も自身のツイッターで反応しています。

今回は甲子園で投球数の制限はしないのかについてと野球大国アメリカでの現状についてシェアしたいと思います。

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甲子園で投球数制限はしないのか?

まず、甲子園での投球数制限が最近問題になったのは皮肉にも今回と同じ済美高校の安楽智大投手(現:東北楽天ゴールデンイーグルス)の投球数でした

済美高校が準優勝した第85回記念選抜高校野球大会(2013年)で安楽投手は、決勝までの全5試合全て先発し、決勝戦の浦和学院戦で6回に降板するまで総投球数772球にもなりました。

安楽投手の投球数が波紋を投げかけたのは、済美高校の初戦が延長13回まで続き、安楽投手が232球投げたことと準々決勝から3連投だったことが要因でした。

この波紋は日本だけでなく、アメリカのスポーツ専門局のESPNが済美高校を取材するほどでした。

今では当たり前となった出場校投手の「肩・肘検査」の導入のきっかけとなった沖縄水産の大野倫投手や松坂大輔投手(現:中日)、斎藤佑樹投手(現:日本ハム)、島袋洋平投手(現:ソフトバンクホークス育成)など過去にも投手の酷使が問題になったことは度々ありました。

その度に日本高等学校野球連盟(高野連)は再試合制の導入やベンチ入り選手の拡充、延長戦の打ち切り(18回→15回)などといった対策を施しました。

この安楽投手の件以降も、高野連は選手の体調管理を考え、同年の第95回の夏の甲子園から準々決勝の試合方式を次のように変更しました。

準々決勝

それまで 1日2試合を2日かけて行う

第95回夏から 4試合を1日で済まし、準優勝前に1日の休養日を設ける

この休養日導入で、3連戦がなくなりました

また、年から時間短縮や選手の負担を減らす目的もあり、今年の選抜高校野球から延長13回からタイブレーク制が導入され、夏の甲子園1回戦の旭川大学高校と佐久長聖高校戦で初めて適用されました。

 

 

そして、次の対策としてよく言われているのが投手の投球数制限です。

現在の高野連のスタンスは「複数投手制」の奨励に留まっており、投手の投球数制限については慎重な立場です。

その大きな理由としてよく言われるのは私立高校が一層有利になるという意見です。

投手の投球数を制限すると必然的に複数の投手を擁立しなければなりません。

そうなると2番手以降の投手の出来が勝敗を大きく左右することになり、選手層の厚い私立高校が一層有利になってしまいます

この他には「戦略」としてファールを狙って球数を稼ぐ、ルール違反ではないものの学生スポーツらしくない戦術を採る可能性も考慮されます。

実際、安楽投手も第95回夏の甲子園の3回戦で対戦経験のある、花巻東高校の千葉翔太選手(日本大学→九州三菱自動車)の「カット打法」は大変な物議を醸しましたね

また、選手層の薄いチームでは2番手以降の投手が打たれることでチームへ迷惑をかけたという精神的な負担がのしかかることも考えられます。

公立学校の出場を取るのか、投手の将来を取るのか、高野連の今後の判断に注目です。

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アメリカではどうしてる?

アメリカを初め、国際的には延長戦に入った場合、タイブレーク方式を採用しています。

上述のように、今年の選抜高校野球から甲子園でも採用されましたが、元々社会人野球や大学野球、さらには高校野球でも国民体育大会、明治神宮野球大会ではタイブレーク方式でした。

しかし、アメリカの各州の高校体育連盟などを統括するNFHS(National federation of state high school associations)の野球規則委員会で2017年シーズンからNFHSに加盟する全ての高校体育連盟に対して、投手の「投球数制限」と「登板間隔」を規則に盛り込むように求めました

これによって、全50州のうち44州で投球数制限などの規則が設けられました。

但し、州ごとにシーズン機関や公式戦の試合数が異なるため、何球で制限するのか、登板間隔はどのくらい空けるのかについては各州の高校体育連盟に委ねられます。

例としてミシガン州を挙げると
1日105球まで
76球以上投げた投手→3日間の休養
51球以上投げた投手→2日間の休養
26球以上投げた投手→1日の休養
25球以下投げた投手→連投可能(3連投については不明)

この他に、MLBでは2014年に若い年代の投手の怪我を防ぐ目的で「pitch smart」という専用サイトを開設しました。
このサイトによると

●17-18歳
1日105球まで
76球以上→4日の休養日
61球以上→3日の休養日
46球以上→2日の休養日
31球以上→1日の休養日
30球以下→連投可能

●15-16歳
1日95球まで、休養日は17-18歳と変わらず

となっています。

各州の投球数制限はこの「pitch smart」に準拠しているのかもしれません

アメリカでは肩・肘は「消耗品」で消しゴムのように擦り減ることはあっても完全に回復することは無いという考えが強く、MLBではローテションを守ることを最優先するために100球をめどに交代することが一般的です。

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ネットの反応まとめ

高校生の若者がマウンドを自ら降りることは絶対ないので、大人が球数制限というルールを作ってあげないといけない
高校野球の投手は球数制限120球とか設定した方がいい
これまで何人の選手がつぶれたことか
投手を複数用意しなければならないので、地方の公立高校がますます不利になるんだよね
二番手もちゃんと育成してこそのチーム力だよ
最悪壊れたらそれは美学にはならないと思う
球数制限設けろなんて人数10数人単位の野球部からしたら酷な話
投手やってた身としては球数制限よりも登板間隔の方が大事だと思うけどなあ
球数制限にすると良い投手はカットされるようになる。
球数制限は『ゴロアウトの技巧派』以外が不利になると映り投手の個性・多様性を奪いかねないから導入してほしくない

投手の肩・肘への負担を減らすために投球数を制限することは一見すると素晴らしいことに思いますが、今度は甲子園の大会に公立高校が躍進する可能性を閉ざしてしまう問題点もあります。

去年の選抜高校野球に21世紀枠で出場した岩手の不来方高校は部員数が10人と控えが1人しかいないチームです。

投球数制限を設けることはこのような野球部の部員数が少ないチームが甲子園に行くこと自体を諦めるか他校との連合チームでの出場になることを推進する可能性があります。

また、好投手をマウンドから引きずり落とすために待球作戦やカットが「戦術」として横行することも考えられます。

高野連はこういった問題と投手の肩・肘の問題、そして選手自身の意思のバランスを鑑みた対策を講じるとともに、野球部の監督も選手のマネジメントをしなければならない時代が来たのかもしれませんね。